ゲーテ 自然と象徴

ゲーテの「自然と象徴」。忘れたころに、カードをめくるように、そのとき1ページ読み返したくなる本のひとつ。ゲーテは詩人、文豪という文学者として知られていますが、この本は、もう一つの顔である自然科学者としての「科学方法論」と「形態学」、「色彩論」が一冊にまとまっています。

自然というものは、目や耳ばかりではなく、ほかのさまざまな感覚にも語りかけてくる。自然界の言葉、植物の言葉を文字で表現できるようになるには、文才も必要です。ゲーテは、自然を見る力と言葉の力を合わせ持ち、科学のあり方に反発したように思います。

植物のメタモルフォーゼや色について、深めたい方にはぜひおすすめしたい本です。


「直観とは、たんに感じることではなく、注意深く見つめることである」


「光は闇とともに色彩を生み出します。そのような場合、光は魂の美しい象徴にほかなりません。魂は物質とともに肉体をつくり出し、生命を吹き込むからです」


深く共感するゲーテの自然観。200年前に生きた偉人の感覚にふれると、現代社会がとても不便に思います。

『自然と象徴〜自然科学論集〜』ゲーテ著/冨山房百科文庫 1982年