プリニウス博物誌 植物篇

自然界にできたものは、何ひとつ語らないまま放っておくことがないように。

プリニウスはそういって、博物誌植物篇を「樹木」から語りはじめています。

『長い間、大地のいろいろな恵みは人目にふれず、樹木と森が人間に与えられた最高の賜物と考えられてきた。樹木から最初の食物が得られ、葉を敷くことによって岩穴はいっそう快適な住まいとなり、木の皮からは衣服がつくられた。』

『森は神々の神殿だった。今でも素朴な生活をしている田舎では、古来の祭式どおり、とくに高い木を神に捧げている。またわれわれも、光輝く金や象牙の神像でさえ、聖なる森やその中にただよう全くの静寂さほどは崇めることがない。』本文より。

後半には、ヘンルーダやミント、ディルなどのハーブやキャベツ、レタス、カブなど野菜についてもその使い方を述べています。

プリニウスは紀元一世紀に生きた古代ローマの博物学者、著述家。自然界への理解を深めるべく書き上げられた博物誌は、プリニウスの思想と自然哲学が詰め込まれた全37巻の膨大な百科全書。この一冊は、植物についての第12巻から第19巻までで構成された植物篇です。ラテン語原典からの全訳を手がけたのは亡き大槻真一郞先生。プリニウスの思いも重なり、一ページずつ大事に読み返す本です。

2000年も前の人、豊かなローマでプリニウスは自然をどのようにみつめていたのだろう。

哺乳類から魚、鳥、昆虫までの動物たちと同じように植物すべてにも精気があると考え、植物にも血液や骨髄、皮膚があると記述しています。そのほか、鉱物、天文学などあらゆる自然知識がまとめられています。私にとって、古代に生きた人の観察力がとても興味深く、そして、あこがれます。


『プリニウス博物誌 植物篇』大槻真一郞 責任編集/八坂書房 1994年

※私がもっているのは、古いものですが、新書が2009年に出版されています。

※薬草についてまとめられたた植物薬剤篇もあります。