失われた森

沈黙の春、センスオブワンダーの著者レイチェルカーソンの遺稿集『失われた森』。エコロジーや環境破壊について、いち早く気づき人々に理解を促した科学者であり文筆家のカーソンの思想は、自然を愛する人々の道しるべとなりました。

この本は少女時代の投稿作品から1964年にこの世を去るまでの埋没原稿を編集しまとめられた一冊です。20〜30年前にかけて私は環境問題について知るためにたくさんの本を読みました。これもそのひとつ。カーソンの言葉は、まるで自分の中に眠っていた言葉たちが生き生きとよみがえっていく気持ちでした。現在の科学では合わない内容もあるようですが、地球の美しい神秘を描く言葉たちは、今また私にエールをくださった。センスオブワンダーは亡くなった翌年に出版されています。

以下、抜粋です。 
〝自然界とふれあうことの価値、その喜びは、科学者だけのものではありません。人のいない山頂や、海のまっただなか、森の静寂に身をおく人、あるいは、植物の種子が育つ仕組みのようなささいな神秘に目をとめて、それについて考えられる人なら、だれでも手に入れることができます。
今宵こうして、自然の美しさが個人や社会の精神的発展に欠くべからざるものだと信じていると語ることによって、たとえ皆さんから感傷的な人間だと思われようと、私はまったく構いません。私たちが自然の美しさを破壊するとき、あるいは、地球の自然の姿を人工的なものに置き換えるとき、それは人間の精神的成長を多少なりとも阻害することに他ならない、と私は確信しています。〟
1954年春の講演より。

『失われた森』レイチェル・カーソン著/集英社 
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